出会ってくれて、ありがとう

初恋の相手へ

小学校の頃、６年間ずっと同じクラスだった男の子がいました。

私の初恋の相手です。友達も、親も誰も知らない初恋。

ひっそりと恋をして、静かに失恋しました。

彼と私は、なぜか隣の席になることが多かったです。
プリントを交換して丸付けしたり、算数の問題を一緒に解いたり。
私のノートを見て、「字、めっちゃキレイ！」と言ってくれて、私は字の練習を始めました。
体育では、運動神経の悪い私がボールをキャッチできる度に笑顔を向けてくれたり。
中学受験に合格し、学校に行くと「よかったね」と声をかけてくれたり。

自分の存在を認めてくれる彼に恋をしました。

クラスのリーダーと私みたいな地味な子が釣り合うわけないと思いつつ、毎日彼に会うことを楽しみに学校に行っていた頃が懐かしいです。

当時から流行にも鈍感で、同い年の女の子たちの一歩後を行っていた私が、“恋”という言葉の意味を知ったのは、小学校５年の時。今まで感じていたこの気持ちが、“恋“なのだと気がつきました。
彼と、隣のクラスの女の子が両思いだという噂が流れ始めた時でした。

それからも、「好き」なのは止められなくて。…卒業すると、毎日会えなくなるのが辛くて。入学してから、ほぼ毎日同じ教室にいた彼の存在は、とても大きなものでした。

卒業後は、一度も会えていません。
スマホを持っていない私は、彼とSNSで繋がっている親友から、彼の近況を聞いたりしています。

親友が時々、彼の最近の写真を見せてくれます。その度に、恋をしていた小学生時代を思い出して、幸せな気持ちになります。

恋をして、よかった。あんなに楽しい時間を過ごせたのだから。

初恋の思い出は、一生の宝物です。

もう２度と会えなくてもいいから。どうか、あの時と同じ笑顔でいてね。
あの笑顔も、大好きでした。

…本当はね、成人式で会えたりしないかな、なんて期待しちゃってるよ。
迷惑は絶対にかけないって約束するから、もし会えたら一言だけ声をかけさせて欲しい。「久しぶり」だけでいい。

あなたが私を忘れてるかもしれないね。

そうしたら、心の中で一言呟くだけにする。

「出会ってくれて、ありがとう」って。

お気に入りに入れる