- 04 お祖父ちゃんへのありがとう
- 2018.04.04
「わたし」をつくってくれて、ありがとう
じいちゃん。元気にしていますか?
じいちゃんが亡くなってもう20年になりますね。
つい先日、命日だったね。
でもね、あれから、じいちゃんの子供たちもだんだん歳をとって、
いろいろ。いろいろあってね。
孫の私はお墓参りも行けないでいます。ごめんなさい。
でも、心配しないでね。ちゃんとみんなのいろいろを見守っていこうと思っているからね。
じいちゃんのこと、たくさん思い出すよ。
だって、私はじいちゃんが大好きだったから。
じいちゃんの元から、かけおちをして私を産んだママの事を許してくれて、私の名前をつけてくれた。
7歳の時、父親が出て行ってから、私達家族をいつも心配して遠くから会いに来てくれた。
シャンと伸びた筋肉質なじいちゃんの背中は、いつもいい香りがして、
妹と二人でずっとピッタリと張り付いて甘えたのをよく覚えてる。
何も言わずに黙って受け入れてくれるじいちゃんのことが本当に大好きだった。
中学生だったかな。仕事で忙しいママが喜んでくれるかなって、私はある日ポテトサラダを作ったんだ。
なんだか味気なくて、うまくできなかった。
自分も食べたくないくらいだから、やっぱりママと妹にも不評だった。
次の日に来たじいちゃんに、そんなことがあってガッカリしたよと笑い話にして教えたら、「持ってこい。」って言って、大きいタッパーいっぱいのポテトサラダを無言で全部食べてくれたよね。
じいちゃん、ポテトサラダ好きだったんだと思って、すごく嬉しかったな。
何年も後に、母やばあちゃん、親戚のみんなに「じいちゃん、ポテトサラダなんて好きじゃなかったよ。」って言われた時、私のためにあんなにいっぱい無理して美味しそうに食べてくれたんだと知った。
嬉しさや切なさが入り混じった感情で、涙が止まらなくなったよ。
私はじいちゃんのそんな優しさにずっと包まれてきたんだよね。
そんなふうに優しい人になりたいと思った。
誰にも言ったことはないけど、父親がいない私は、子供ながらに勝手に母や妹を守らなきゃいけないという気持ちがずっと強くあって、じいちゃんが来た日は本当に、本当に心強かった。
私にとってじいちゃんは唯一甘えてもいい人で、心の支えだったんだ。
じいちゃんが病気で入院した時はすごく不安だった。
毎日のように高校の帰り道、制服のままお見舞いに行く私に、「形見。」と言って指輪をくれたよね。
「やだよ。」って言ったら、「いいから。」って手に握らされた。
形見なんて考えるのも嫌だって思いながらも、じいちゃんがいつも身に着けていた金の指輪をもらえたことがすごく嬉しかった。
20年たった今でも私の宝物だよ。
じいちゃん。私は元気です。
もうだいぶ前だけど、結婚して、じいちゃんの命日の前の日に二人目の娘を産みました。
可愛いよ。じいちゃんに抱っこして欲しかったな。
じいちゃんのように優しくなりたいと思って生きてきたけど、現実はそう甘くなくて、娘たちに怒ったり、旦那に理不尽な事を言ったりしちゃう毎日だけど。
まだまだこれからでしょう?
すごく小さい時の記憶もあってね、
じいちゃんの家でお客さんが来ているのに、お話してるじいちゃんによじ登ったり、じいちゃんじいちゃんってベタベタ甘えていたら、「うるさい!」って怒られた。
じいちゃんに怒られた事がショックで、ずっと裏口でいじけていたの。
いじけている間も、じいちゃんが気にして探しに来てくれないかと待っていたのに、じいちゃん来てくれなかったから、やっぱり自分からまた抱っこされに行ったんだ。
ほら、じいちゃんだって怒ったりしていたでしょう?
だから私も大丈夫。これからの人生も優しい人になることを目標に頑張るよ。
じいちゃんが亡くなって、会いに行った日、私は次から次にお別れをしに来た人にお構いもせず、泣きながらじいちゃんの隣に何時間も寝ていたの。知っているかな?
寂しくて、悲しくて仕方ないのに、安心して眠ったんだ。
「じいちゃんに被さるな!」ってママに怒って起こされたよ。
思い返すと、もう社会人だったのに、子供の時とやっている事が変わらないね。
私ね、介護福祉士になったんだ。
じいちゃんにしたかったみたいに話をしたり、聞いたり、じいちゃんにしたかったみたいにお世話をするの。
みんな、じいちゃんのように誰かの偉大な大切な人だから。
今はママも一緒に暮らしているよ。
孫が可愛くて仕方ないみたい。
じいちゃんもきっと私が可愛かったよね。
優しい家族に囲まれて、優しい人になりたいという目標に向かって努力する私がいて、その目標に併せて、誇りに思う仕事もある。
私の価値観は、「わたし」そのもので、今まで経験してきた事、出会ってきた全ての人によってつくられたものだと思う。
その中で、じいちゃんの存在は本当に大きくて、考えるだけで何かが溢れてきちゃいそう。
じいちゃん。溢れる愛と優しさで、「わたし」をつくってくれて、ありがとう。
ありがとう、っていう言葉だけでは言い表せないくらい、ありがとう。
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