子育ては大変だと簡単に言うけれど

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名前も知らない通りすがりのおじさんへ

主人の転勤で引っ越しをして、周りに誰も知り合いのいない環境の中で始まった孤独な子育て。頼りの主人の帰りは遅いし、スーパー、薬局、病院、バス停、あらゆることを乳飲み子を抱えながら一から知っていくのは大変でした。

私はとても疲れていたんでしょうか?ふらふらと近所の大きな公園を歩いていた時、
「おう、坊主。いい目しているな」
明らかにガラの悪い、小指のない強面のそんなおじさん。
私はとても恐ろしかったです。でも、子供はおじさんに笑うんです。

「うん、将来大物になる」
もしかしたらただの危険な酔っ払い(昼間っから?)
もしかしたら因縁をつけられているのかも
いろんなifも沸き上がる中で、それでもそんな風にさりげない寄り添いの言葉を掛けられたのは引っ越しをしてきて初めてのことでした。

「母ちゃん、しっかり育てろよ?」
それは『自分の大変』に圧し潰されそうになっていた私の心に今でも刺さっている言葉です。いわゆる生きにくい資質を持って生まれた息子はその後も周りとのいざこざ、突然の家出に自殺未遂、色々と出来事がありました。というか今でもまだありますが。

でも、あの日「いい目」だと言われた目は今でも私からしてもとても綺麗に思えて、何がどうなってもこの子は最終的には幸せな人生を生きていくことになると理屈でなく心が理解しています。もう成人したうちの子が不器用ながらも優しく笑う姿は、あの日のものによく似ています。

誰だかわからない強面のおじさん、ありがとう。
もうそんな一言、その人はとっくに忘れてしまっているかもしれませんね。

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