美味しい料理をありがとう

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主人へ

私の主人は料理が大好きでした。
なぜ、過去形かというと、もう亡くなってしまったからです。
元気な時は、しょっちゅうホームパーティーをして、友人たちに料理を振舞っていました。
家族や親せきにも、よく料理のおすそ分けをしたものです。
闘病中も、具合がいい日は先ず、キッチンに。
入院から帰ってきた日にもすぐにキッチンに立つような人でした。
子供たちも私も、そんな主人の料理が大好きでした。
チーズがたっぷり入った、トマトソースのパスタ。
チョコレートやクランチの入ったパウンドケーキ。
珍しい国の料理、クスクスやタジン、ラップサンド。
和食は出汁からとるこだわりよう。
挙げればきりがないほど、実に様々な料理を作ってくれました。
亡くなって3年経つのに、時々、誰もいないはずのキッチンからいい香りがするような錯覚を覚えます。
慌ててキッチンに行っても、もちろん、誰もいないですし、料理も出来上がってはいません。
時々、子供たちは「パパの作ったあの料理が食べたいなあ」と、言います。
もっと、レシピを教わっておけば良かった、と後悔します。
でも、五感の中で一番正直者、と言われる味覚に、主人の思い出が宿っていることをうれしく思うのです。
闘病中は子供たちの運動会にも、キャンプにもこれなかった主人。
ですが、キッチンに立つ姿はあの時の味とともに、子供たちの心に焼き付いているはずです。
私も、もう一度あなたの料理が食べたいです。
手作りというぬくもりを、豊かな食卓を、美味しい味を、キッチンに立つ後姿を、どうもありがとう。
あの頃が、夢のようです。

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