おばあちゃんの代わりに「ありがとう」

投稿者 

待合室で出会ったあなたへ

私には100歳で大往生した祖母がいました。

私が住んでいた場所から車で2時間以上かかる場所に住んでいて、当時学生だった私は車も持っておらず交通費もままならないため、1年に何度かしか会いにいくことはできませんでした。もっと会うことができればと思っていた矢先、幸か不幸か祖母は一人で料理ができなくなってきたため、近くのケアハウスに引っ越してくることになりました。

最初は戸惑っていた祖母でしたが、持ち前の明るい性格で友人もでき、楽しく生活しているようでした。しかし体の衰えには逆らえず、夏の暑さもあってかある時からごはんが喉を通らなくなってしまいました。「何か食べたいものはある?」と聞くと、「お寿司が食べたい」と言いました。ケアハウスではスタッフの方が食事を運んできてくださるのですが、特別メニューを毎日出すわけにもいかず困り果てていました。

ある日祖母の検診のため付き添いとして病院に行き、待合室で食べたいものの話になりました。「やっぱり毎日お寿司が食べたいわ」という祖母に「こうやって外出するときはお昼ご飯に食べに行けるけれど、毎日は難しいかなあ、なまものだし、今は特に暑い時期だからね、食べさせてあげたいけど…」と話していると、隣に座っていた女性が「炊けたごはんに混ぜるだけでちらし寿司になるものが売っているから、それを試してみたら?」と教えてくださいました。ご親切にホッとしました。

お礼を言って早速帰り道にスーパーで購入し、次の日にケアハウスに持って行きました。スタッフの方も快く受け入れてくださり、晩御飯に出してくださることになりました。

でもきっと祖母は生魚が食べたいんだろうな…と正直期待はしていなかったのですが「そうそう、酢飯が食べたかったの!」と一気に食欲が戻り、なんとおかずまで食べることができました。どうしたものかと悩んでいたのが嘘のようでした。体調も回復し、顔色も良くなってお話も一時期よりしっかりできるようになっていました。

100歳を迎えてしばらくした日、眠るように祖母は天国へ旅立ちました。お医者様に最後まで苦しむことがなかったと言われ、悲しみもありましたが、心から「おばあちゃん、よかったね」と見送ることができました。

あの日病院の待合室で女性に出会っていなければ、やせ細っていく祖母を助けることができなかったかもしれないと思うと、お礼を言いたくて仕方がないのですが、かないません。この場をお借りしてお礼を述べたいと思いました。「おばあちゃんは最後まで美味しいものをいただいて幸せそうでした。本当にありがとうございました。」

FavoriteLoadingお気に入りに入れる
ハートを送る を送る (13
Loading...
スポンサーリンク
>>新しい手紙一覧へ
>>新しい手紙一覧へ