- 01 お母さんへのありがとう
- 2019.07.15
あの時のメッセージが、私の道しるべです。
おまめ
お母さんへ
働き始めてすぐ、厳しい父親がいる家に帰るのが嫌で、私は少しずつ、家に帰らなくなりました。
会社の近くに部屋を借りて、どこに住んでいるのかも告げずに帰らなくなった私に苛立ち、父親は、お母さんのことを責めましたね。ごめんなさい。
そうなってしまうのではないかと考えたこともあったのですが、あの頃の私は、あの家から逃れることで精一杯でした。周りのことまで考える余裕がなかったんですよね。お母さんが何を言われたのか、どんな思いをしていたのか、今になって考えると、申し訳なさでいっぱいです。
家を出てからしばらくして、お母さんにだけ居場所を伝えましたね。車を持たないお母さんは、片道1時間バスに乗って、いるかいないかわからない私の部屋を、時々訪ねてくるようになりました。
ある年の私のお誕生日には、私が好きだと話したことのある、銀色夏生の本を10冊も束にしてラッピングし、メッセージを添えて玄関先に置いていってくれましたね。そのメッセージに書かれていた、「からだは元気ですか。心はげんきですか。」という言葉に、いろいろな感情が噴き出して、涙が止まらなくなりました。
ねぇ、お母さん。きっと私に言いたいこと、沢山あったよね。何も言わずに、飲み込んでくれてありがとう。何も言わずに、私を見守っていてくれてありがとう。私は今、何か困ったことにあると自分に問いかけるんです。「からだは元気ですか。心はげんきですか。」と。
そして、この言葉に反していると思ったことは、立ち止まって考え直すようになりました。あの時のメッセージが、私の道しるべです。お母さん、ありがとう。
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