あの日私の夢を笑わないでくれた先生へ

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先生へ

かつて学生だった頃の話です。
私の通っていたのは進学校で、周りはきちんと勉強してちゃんとした学校に入りちゃんとした会社に入る事を目指す友人たちばかりでした。
そんな友人たちの事はもちろん大好きでした。

でも、大好きであることと、考え方が違うことは全く別の問題です。
真面目な友人たちの中で私は一人、舞台に立ってみたかった。
舞台の上で役になりきり、人々を楽しませることは私の
小さい頃からの憧れでした。

親にも友人にも言ったことのなかったこの小さな夢を、
ある晴れた春の日に、職員室で先生に打ち明けたことがありました。

何故先生には言うことが出来たのか、今となっては思い出すことは難しいです。
ただ、麗らかな春の陽を眺めながら、先生と色々な話をしていたことだけは覚えています。

先生は数学の教科書を眺めながら、私の話を何でもないように聞いていました。
何でもないように聞いてくれるその態度が、きっと私の口をうっかりと滑らせたのでしょう。

先生は「へえ、そうなんですか」と言いました。
「それは良い夢ですね」と、面白そうに答えた先生の笑顔は今でも忘れません。

その後、「舞台ではどんな役がしたい?」とか、「テレビとかには出たくないの?」とか、先生はまるで私の夢を一緒に見ているように質問をしてくれました。
決して「舞台に立てるのは一握りの人間だ」とか、「他に夢はないの?」だとか、そんなことを言わなかった先生。

私はあの時の事があって、今でも自分の信じる道を疑わずに生きて来ることができました。
人生がこんなに楽しいなんて、先生があの時私を否定しないでいてくれなかったら、きっと知らなかった。

ありがとうございます、先生。

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