お父さんへ

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お父さん

私の父は昔からいい加減な人でした。調子の良いことを言って人からお金を借りてギャンブルして大負けしたり、浮気したり…私が幼い頃に離婚してしまったので父と暮らした記憶はあまりありませんが、母がものすごく苦労したと思います。
 そんなめちゃくちゃな父でしたが、一人娘の私をものすごく可愛がってくれました。厳しい母とは正反対で父からは一度も叱られたことはなく、はっきり言って甘やかされて育ちました。当時貧しかったですが、私はよく父に、こっそりレストランや遊園地に連れて行ってもらったりしました。その思い出は、無条件に愛してくれているのを感じて私の心を強くしてくれました。
 そんな私も思春期を迎え、だんだんと離婚した経緯などを知って父を軽蔑するようになり、定期的に会いにきてくれる父と素直に接することができない時期がありました。その当時、私は母子家庭で苦労している母を間近でみて、女性でもひとりでお金をしっかり稼いで自立できる人にならなければという強迫観念のようなもので、必死に勉強していました。そのストレスからか、抜毛症(自分だけを抜いてしまう)になってしまい、髪の毛がほとんどなくなって坊主のようになっていました。母には私の精神的弱さを叱られ、周りからは白い目で見られ、それでも大学進学のため高校には行かなくちゃいけない…。
 もう、どん底にいたとき、父がやってきました。母と同じように私を叱るかと思っていたら、お調子者の父は一言、
「りんちゃん、かっこいいじゃないの。お父さん、りんちゃんにはまだお嫁に行って欲しく無いから、しばらくその髪型でいいよ」
と言ったのです。私はその一言で、拍子抜けしたと同時に、ものすごく救われました。やっぱり、いつでも父は私がどんな時でも無条件に受け入れて愛してくれる…。今思い出しても涙が出ます。真っ暗闇の中に一筋の光が差し込んだように、私の心を暖かくする言葉でした。
 側から見たらとんでもない父親にしか見えないでしょうが、私にとっては世界一の父です。あの時のあの言葉は、父しか言えない言葉でした…本当に感謝しかありません。
 お父さん、ありがとう。

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