父さんへ

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父さん。私は、あなたに言ってないことがある。早く言えば良かった。でも言えなかった。

あなたが悪いんだ。ずっと、そう思ってきた。あなたのせいで、母さんが死んだんだって。

あの大雪の日、あなたは、降り積もった雪をそのままにして行ってしまった。あの後、母さんと二人で何時間もかけて雪をかいた。

小学校の運動会も、あなたは仕事だったね。私が一等賞とった時、母さん、すごく喜んでくれた。父さん、私がどんなに、一生懸命走ったか知ってる?

学芸会の時も、私は吹けなかった笛を吹けるようになったよ。あの時、私は、父さんの姿を探した。私は、待ってたんだよ。あなたが来てくれるのを。

だけど、あの日、母さんが死んだ日。あの日もあなたはいなかった。そう、仕事だったよね。

あの日、私は、あなたを責めた。「母さんが死んだのは父さんのせいだ」って。そしたら父さん、小さな声で言った。「ごめん」って。
父さん、泣いてた。

あれから父さん、変わった。毎朝、私にご飯を作ってくれた。ほんとは美味しかった。一度も言わなかったけど、あの味噌汁、母さんと同じ味だった。

今、私は、あなたと同じ大人になった。今ならあなたのことが分かる。大切な仕事だったんだね。あなたを待ってる人が大勢いたんだよね。

今さら分かっても、もう遅いよね。でも、ずっと言いたかった。「ありがとう」って。

父さん。母さんと幸せにね。

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