不安な夜にくれたあなたの優しさにありがとう

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母の入院先の女性看護師さんへ

もう20年ほど前になります。ある日母が倒れ、病院へ搬送されました。
脳卒中で意識不明。現在ほどの医療技術や家族の認識などが薄く、私たち家族は突然訪れた不幸になすすべなく呆然としていました。

意識が戻らない母のそばで夜を明かすことになり、家族で交代で付き添いました。
病室で付き添えるのは一人だけだったので、父が母の横で簡易ベッドで横になりました。
兄と2人、私たちは待合室のベンチで体を横たえていました。
真っ暗な夜の病棟、どうなるかともわからない不安に、子供の私はいつしかガタガタ震えていました。もちろん病棟内の気温は適切なのです。
横になっても眠れるわけも泣く、お母さんどうなっちゃうの、という不安で吐き気さえ催していました。

その時、待合室の向かいにあるナースステーションのドアが開き、女性看護師であるあなたが出てきました。
見回りかな、と思っていた私はそのまま横になっていたのですが、あなたはどこかへ行った後何かを両手に持ち、私たちの方へ近寄ってきました。
そして眠っていると思われる私の体に、そっとお布団をかけてくれたのです。

すぐに動けず、そのまま「眠ったふり」をしてしまう形になりましたが、あなたは兄の分もかけてくれていました。
そしてそのまま私たちを起こさないよう、またナースステーションに戻っていきました。
不安しかない状況の中、名前も知らない方にかけていただいた優しさに緊張がほぐれ、私はその布団を握り締めて涙をこぼしました。
真っ暗で寒い中に一人だけ取り残されたような孤独感と不安しかない中で触れた、誰かの思いやりがこんなにも助けになってくれるのか、と私は疲労を覚えながらもそのままいつしか眠っていました。

朝になり私は誰かに起こされ、ばたばたと病室へ入って行きました。
結局、あなたのお名前もわかりませんでした。
わかっていたら一言御礼が言いたかったのですが、その後母が亡くなった事もありかなわないままでした。
今でもあの夜のことを思い出し、あなたの優しさに助けられたことに胸に迫るものがあります。
看護師であるあなたからすれば取るに足らない日常のことだったかもしれません。だけど患者家族の私たちにとっては、不安をやわらげてくれるとても大きな存在でした。

あなたの優しさ、気遣いにあの夜私は救われました。本当にありがとうございました。
今もあなたが人々に優しさを振りまいてくれていたら、と願うばかりです。

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