伝えたかった

高校の時の先生へ

先生、私、先生からの言葉がなければ、あんなに勉強しなかったし、大学でのいろんな出会いや経験ができなかったし、今の自分はいなかったよ。

当時は全然勉強ができなかったけど、先生からの言葉をもらってから、朝一番に学校へ行って、勉強するようになった。
先生はいつも朝早く教室に来て、1人でモップ掛けをしながら声を掛けてくれたよね。

高校3年生になって担任じゃなくなっても、教室を覗いて挨拶してくれたよね。
先生がガンになって入院したと知ったとき、ショックだったけど、先生に恩返しをするためにも頑張ろうって思った。
ずっと入院していて、その年はもう復帰はできないって決まっていたけど、センター試験当日、雪の中校門に立っていて、痩せ細った手で力強く握手してくれたことを今でも鮮明に覚えてるよ。

卒業式の前、学校に来てくれて、私は違うクラスだったから会えなかったけど、先生が受け持っていたクラスの子から、あと1年療養して、復帰する予定だってことを聞いて、すごくほっとした。その言葉を、素直に信じちゃってた。

でもあれは受験を控える私たちへの、優しい嘘だったんだね。
先生、私、絶対無理だと思ってたあの大学に、合格したよ。
先生が勧めてくれなかったら、受けようとなんて思わなかったよ。
入学して落ち着いたら、元気な顔を見せに行こうって、合格したよって直接伝えに行こうって思ってたんだよ。

あれ、入学式の2日目だったよ。先生が亡くなったってメールが回ってきたの。
ありがとうってちゃんと伝えたかったよ。
先生のおかげで、たくさんのいい出会いや経験に恵まれたし、感謝してもしきれないよ。
先生、本当にありがとう。
これからは、ありがとうって気持ち、伝えたいと思ったその時に、ちゃんと伝えていくね。

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