通りすがりのあの人へありがとう

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見知らぬおばあさん

ある雨の日。
しとしとと小雨が降りしきる中、傘を差さずに学校行きのバスを待っていた。
ふっと影が横切って、私の頭上にかさをさしかけてくれたおばあさん。
「どうしたの?傘を忘れたの? ぬれて風邪引いちゃうわよ!」
引っ越してきたばかりの土地で、いきなり見知らぬ人に声を掛けられびっくりした私は、しどろもどろの声でしかお礼を言えませんでした。

「あ、ありがとうござます・・・」
「どこに行く予定?傘、貸してあげようか?
「あ、いえ、大丈夫です。折りたたみ傘は持っているんです・・・」
じゃあなぜささないの!と、ハンカチを取り出して私の髪まで拭いてくださって。申し訳なさ過ぎて、どんどん小声になる私。
「持っているんですけど、使った後乾かすのが面倒だなってっ・・・」
「そんなの、帰ったら玄関に開いて置いておけば良いのよ!」
駄目よー女の子は体冷やしちゃとたしなめてくれたおばあさん。
とっても嬉しかったです。大きな声でお礼が言えなくてごめんなさい。

私はいわゆるネグレクトを受けて育った子供でした。
親に大切にされた覚えは無いし、生活に役立つことを教えて貰ったこともない。
与えられたのはただただ罵倒だけ。
きっと普通の家庭に育った方は、おばあさんみたいに他人にも優しくできるのでしょう。おばあさんのお子さんやお孫さんはきっと幸せだろうな。
私もおばあさんみたいに、知らない人にも優しく出来る人間になりたい。
そんな気持ちを伝えられたら良かった。今でも心残りです。

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