名前を呼んでくれてありがとう

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お義母さんへ

お義母さん
お義母さんが認知症になって約10年。
日に日に記憶をなくしていくお義母さんをなんとかこっちの世界にとどまらせようと必死に毎日話しかけていましたね。
女手一つで息子二人を育て上げたお義母さんは苦労ばかりの人生でした。
そんなお義母さんから記憶を奪っていったのは神様の最後の計らいかもしれません。
昔の記憶も無くなってしまったお義母さんは今すごく穏やかな表情になり、毎日の食事だけが楽しみになりました。
今までの苦労を思い出して眠れなくなるようなことも無くなったのですね。

私をお嫁にもらってくれたお義母さんの息子は優しい人ですがとても難しいところがあって結婚生活は順風満帆なものでありませんでした。
でもお義母さんはそんな時いつもいつも全面的に私の味方になってくれました。

きっと最愛の息子であっただろうにその息子に向かって「お前が出て行け」と叫んだこともありました。
お義母さんはいつも体を張って私の事を守ろうとしてくれたんですね。

そんな大好きなお義母さんがだんだん記憶をなくしていき、可愛がっていた孫の事も忘れてしまったとき何よりも怖かったのはお義母さんが私の事を忘れてしまう事でした。
忘れられないように毎日毎日会いに行っていたけどヘルパーさんと間違えてる時もありましたね。
もちろん名前も忘れられてしまいました。

全然会いに行かない息子二人の事は覚えているのにどうして私の事は忘れちゃったんだろうと憎らしい気持ちになることもありました。

でもお義母さんが骨折して入院した時、痛みがあるのに病衣に着替えなければならなかったお義母さんは看護師さんに押さえつけられながら大声で呼んだのは私の名前でした。

愛する息子の名前ではなく・・・

お義母さん
お義母さん

娘のいないお義母さんにとって私は少しでも娘の代わりになれていましたか?

あれからまた私の事は忘れてしまったお義母さんだけど頭の片隅に少しだけでも私の存在は残されていますか?

お義母さん
お義母さん

出来る事ならもう一度名前を呼んでほしいけどあの時、お義母さんが一番苦しかったとき、私の名前を呼んでくれたのが何よりもうれしかったです

名前を呼んでくれてありがとう

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