『最期のありがとう』をありがとう。

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Kさんへ

Kさん。
もう2月も終わり、あなたの大好きだった春へと少しずつ近づいていきます。
春が近づいてくると私はあなたを想い、守れなかった約束を思い出し少し切なくなります。

今年で10年目になるのかな?
私はあなたがいたから、どれだけキツくても安い給料でも今もこの仕事に就いています。

中学卒業して介護という世界にとびこんだ私。ホームヘルパー2級の資格だけは一応取り、昼間はデイサービスで働き夜は高校に通うという忙しい毎日を過ごしました。
自分で選んだ道とはいえ、社会の厳しさにくじけそうになりながらも逃げずにすんだのはあなたのおかげです。

下手したら孫よりも若い私に介助されるのを嫌がる利用者様が多い中あなただけは最初から私を受け入れ応援してくださり、失敗しても怒ったりせず何度もチャレンジさせてくれました。ほかの職員と同様、『介護士』として私を扱ってくれましたね。
今思えば若さゆえの勢いや失礼な言動もあったはずなのに一度も拒否せずに。

あなたのおかげか受け入れてくれる利用者様も増え、身体的介助も拒否されることが減り沢山の方に可愛がって頂くようになりました。その状況を見たほかの職員も私を受け入れてくれるようになり認めてくれるようになりました。

カメラが趣味のあなたは、
「詩音ちゃんの成人式の写真は絶対俺が撮る」「来年の春には桜の下で写真を撮ろう」と約束し、その時がくるのと同時に日々私の成長をとてもたのしみにしてくれてました。

しかし、春が来る前に入院してしまいデイには来れなくなってしまいました。会いたくても規則があり会いにいくことはできなかったけれど奥様やケアマネの方から行く度に私のことを話してる、会いたがってくれてることを聞き会えないかわりに書いた手紙を病室に大事そうに飾ってくださってたと聞きとても嬉しかったです。

そして約束してた春がすぎ、桜も散り暑い夏がきて8月の終わりにあなたは逝ってしまいました。

「父は最期の最期まであなたとの約束をたのしみに頑張って生きようとしてました、あなたの名前を呼んで会いたがっていました。本当にここまでお世話してくれてありがとう」そう涙を流しながら写真を渡してくれたご家族様。

そこには仕事中の私の写真や一緒に撮った写真がいっぱいありました。
私は初めて職場で泣きました。どんなけ辛いことがあっても絶対に職場では泣かないと決め我慢してた私がこらえきれず泣いてしまったのはあの時だけです…。

Kさん。
介護士として、信頼し受け入れてくれて本当にありがとうございました。沢山可愛がってくれてありがとうございました。当時はとても辛く引きずってしまいましたが今思えば介護士としてこれほど嬉しいことはないような気がします。

私はこれからもこの仕事で、最期の時まで寄り添いその人らしく過ごしていける、そんな理想を忘れず追い続けて介護士として働いていきたいと思います。

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