大事なことに気づかせてくれてありがとう

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亡くなった祖母へ

私は若い頃、若干傲慢な考えを持っていました。

母が父の言いなりの専業主婦だったので、経済力を持たないと人間は奴隷のような人生を送ってしまうと勘違いしていました。
いい大学に行き、そこそこ良い収入が得られる仕事をして、人をいいなりにするような男に捕まったらおしまいだと思っていたのです。

地元ではトップの進学校に入学し、そこそこ有名な大学に行くことにしたのも、その考え全てとは言いませんが根底にそういう専業主婦の方を馬鹿にするような思想がありました。

進路については、親戚に大学卒が一人もいなかったので、お婆ちゃんはすごく喜んでくれたと母に聞きました。

しかし、私はお婆ちゃんがガンになって、親戚中が太陽を失ったように落ち込んでしまったのを見て、本当に大事なのは学歴や収入の多さなの?と思ったのです。

お婆ちゃんは元はいいところのお嬢様だったと聞いています。しかし農家の長男のお爺ちゃんに熱烈なプロポーズを受けて嫁いできたと聞きました。
お婆ちゃんは、その後もみかんを収穫したり、子供も6人も育て、電気釜や洗濯機がない時代に家事を全部手で行い、私たち孫にも常に優しく接してくれました。

隣近所にも優しく、誰からも愛される人でしたね。

お婆ちゃんが亡くなった時、農家の専業主婦としては異例ではないでしょうか、600人もの人が本葬に会葬に来たと聞いて
もちろん、葬儀に来た人数だけが人柄の目安ではないのは当然ですが、やっぱりお婆ちゃんの人柄を感じずにはいられませんでした。

学歴や社会的地位など、天国にも持って行けないし人に残すこともできない。
でも、今私がこうして思い出しているように、思いやりや誠実さは亡くなった後も人に残すことができる。お婆ちゃんは私の考えが間違っていると、言葉ではなく何も言わずに生き様で示してくれたと思っています。

その事に気づいたのが大学在学中。奇しくも私は、家政学という家庭経営など主婦の在り方なども一つの学問として学ぶ勉強をしていました。
しかし理屈以上のものを、お婆ちゃんの生き様は教えてくれました。

お婆ちゃんと最後に話したのは、病院で、もう意識がほとんどなかったはずのお婆ちゃんが奇跡的に私に「頑張って」と言ってくれたのが最後でした。

お婆ちゃん、生きる上で本当に大事なことを教えてくれてありがとう。
生前に伝えられなかったけど、お婆ちゃん亡き後も20年以上、ずっと感謝しています。

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