こころよく送り出してくれてありがとう

両親と弟へ

2011年3月。
結婚のため九州へ引っ越すことになっていた私は、3月に入ってから引っ越し作業にバタバタ追われたり、地元の友人たちとの送別会にと忙しく過ごしていました。
引っ越しは3月中旬、入籍は4月上旬と嬉しい反面、それまで一緒に暮らしてきた両親、弟との別れは寂しいものがありました。

そんな時、東北大震災が起こりました。
私と母親は自宅にいて、父と弟は仕事に行っていました。
私の住んでいた所は関東で震度5くらいでした。生まれて初めてあんな大きな揺れを体験しましたが、食器棚の中の物が倒れて割れる程度で済みました。

これは結婚どころじゃない。
ましてや遠方に引っ越しだなんて、家族を置いて私だけ遠くに行くなんて出来ないと思いました。

「私、結婚遅らせようか」
両親にそう言いましたが、「何言ってるの、こっちは大丈夫だから心配しないで九州へ行きなさい」そう言ってくれました。

あの時は原発のことも重なり、私一人が九州に行くのはまるで逃げるような気がして罪悪感にさいなまれました。
でも弟も、「俺がいるから大丈夫だよ」と私の背中を押してくれ、婚約者と相談をして当初の予定通りに入籍することにしました。

引っ越しは交通がマヒしていたこともあり、少し遅らせましたが、予定通り私は春に九州へ行くことになりました。

引っ越しが済み、私が九州へ行く日、実家の最寄り駅まで母に車で送ってもらった時、「じゃあね」と言うのが精一杯でした。

母の強がりだったと思いますが、「この後買い物に行くから」と言い、私を降ろしたあとすぐに去って行きました。

その車の後ろを見送っていると、我慢していた涙が溢れてきました。
その時もまだ心のどこかでこのまま遠くに行ってもいいのか？と自問自答を繰り返していました。

震災後、色々不安だったと思うのに、私のためを思い快く送り出してくれた両親、そして背中を押してくれた弟にいまでも感謝しています。

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