助けてくれてありがとうございました

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当時の彼へ

私が帰国直前に留学先でパスポートをなくした時に、レンタカーで領事館まで連れて行ってくれたことは今でも頭が上がりません。経済的にも逼迫していた私には飛行機のチケットを取り直すことも出来ず、本当にどうして良いか分からずに途方に暮れてしまいました。

私たちが住んでいた街から遠く離れた領事館まで一晩かけて14時間も運転してくれたこと、あなたはただただ優しい人だったと今でも思っています。無事に帰国のための書類を手にした時、とても安堵したのと同時にそれはあなたとのほぼ永遠の別れを意味してもいました。

最後の数日間はずっと勉強で忙しかった生活から解放されて初めて2人きりでのんびりと過ごしたこと、お金がないからとスーパーでパンや飲み物を買ったこと、一度も将来の話をせずに笑って過ごしたこと、あれから何年も経ってしまいました。

お別れの朝にあなたに言われた「世界一素敵な男性を見つけてくれ」という言葉は今も私のなかに残っています。いつもお気楽でシリアスな雰囲気が苦手だったあなたから、まさかそんなことを言われるとは思いませんでした。

でももしあの時に私が帰国する必要がなくても、もっと長い時間を一緒に過ごせることになっていたとしても、私たちは必ずしも上手くはいかなかっただろうとも思います。なのでその最後の言葉は至極現実的で、でもやはり愛に溢れたものだったんだと感じています。

あの時に他に頼れる人がいなかった私を助けてくれて、無事に日本へ帰らせてくれてありがとうございました。もう連絡を取ることもないし私の感謝を直接伝える機会もないと思いますが私はあなたの餞の言葉のとおり世界で一番素敵な人を見つけました。あなたも遠い街で幸せにしていることを願っています。

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