おふくろの味

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お母さんへ

故郷を離れて早いもので4年が経とうとしています

今日の献立は郷土料理のけんちょう
豆腐と大根とにんじん、醤油砂糖みりん酒で作るシンプルな料理だけれど奥が深い
油を敷いた鍋で崩した豆腐を焦がさないように炒めて、豆腐に濃いめの味付けをしてから野菜の水分だけで炊き上げる

農家だった我が家では「畑仕事してるとたくさん汗をかくから」と醤油多めの濃い味に、あとからくるほんのりとした甘みがクセになる
私は「濃い味は苦手」と言いながらもいつも完食してしまった

大学時代にいろいろあって、母をなんとなく避けていた
県内に嫁ぎたいと相談したときも、母から大反対を受けた
いつも私の言うことはダメだといって聞く耳を持たない母が怖かった
だから今まで何を言ってもダメだった
でもどうしても結婚を諦めたくなかったから、勇気を振り絞って何度も何度も話し合った
怖くてどうしようもなくて、何度も泣いた

話していくうちに、母は私が遠く離れていくのが寂しいんだと分かった
今の夫と付き合ってから結納まで1年とあっという間だったけど、母は渋々了解してくれた

離れた土地での親族だけの小さな披露宴
私は緊張して分からなかったけど、終わったあとに
「お母さんずっと笑顔だったよ。よかったね。」
と夫に言われてはじめて気づいた
ずっと母に素直になれなかった
ごめんなさい
そしてありがとう

今は2歳になる子どもと夫のために、今度は私がけんちょうを炊いています
優しい甘さ、薄味でも充分美味しくできました
遠く離れていてもおふくろの味は変わらずここにあります

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