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天国のお父さんへ

お父さん、お父さんはいつも仕事への夢を追い続けていましたね。でも、仕事がうまくいかない時が多く、お母さんが私たち家族をずっと養ってきました。それだけでなく、お父さんが仕事のためにつくった借金を返すのに四苦八苦していました。

そんなお父さんを目の当たりにして、私は子ども心にとても頼りない父親だと思っていました。正直、あの時は、お父さんを尊敬することができませんでした。そんな時に、お父さんは過労で急死、悲しみの底に沈んだ私たち一家は、それでもなんとか頑張ってきました。結局母は死ぬまで働き詰めの人生でした。そんな私は、母の苦労、頑張りにだけ光を当てて、お父さんの働きをないがしろにしてきました。

でも今になって思うのです。お父さんあっての家族だったんだと…。確かに、お母さんは大変だったけれど、でもその苦労があったからこそ、自分のキャリアを全うすることができたのです。もし、お父さんの仕事がうまくいっていて、お母さんが家庭に留まっていたなら、自分の好きな仕事を続けることはなかったかも知れません。結果的に、お父さんの引き起こした状況がお母さんをキャリアの道に導いたのです。そのように考えてみると、全てはなるべくしてなるのだと思えるようになりました。

この頃、自分が幼かった時のことを思い出します。夏になると、お父さんはいつも私を海に連れていってくれましたよね。お父さんは様々なことで心身共に疲弊していたのでしょうが、それでも、私の相手をよくしてくれました。私を愛してくれました。自分がしてもらったことはすっかり忘れて、してもらわなかったことだけに焦点を当てていた自分が恥ずかしいです。本当にごめんなさい。そして、ありがとうございます。やっとこの年になっていろいろなことが見えてきました。情けない娘ですね。

天国でお父さんとお母さんは再会できたでしょうか。私はそう信じています。数年前のことだったと思います。夏の夕暮れに、アゲハチョウが二羽ぴったりと寄り添うように、庭の低木の葉の上で羽を広げて休息をとっていました。それを見た時、どれほど私が心を躍らせたか想像できますか。私は二人からメッセージをもらったと確信しました。私の考え過ぎでしょうか。

お父さんとお母さんが天国でとこしえの幸せを得ることができますように…。

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