親切が灯し続ける心のあかり

投稿者 

スペインのおじさんへ

あれはもう、十何年前。
私はポルトガル、イタリア、フランス、ドイツ、スペインをバックパッカーのスタイルで一人旅をしていました。

各国の世界遺産や自然を見る旅です。節約の旅でしたから、安宿に泊まったり、時には夜行列車を宿代わりにして寝ているうちに次の場所へ、という事もしました。

スペイン。
その夜も夜行列車に乗ろうと、駅へ行きました。
ですが、ホームで待っていると、何かスペイン語の放送が入り、人々が移動し始めました。
スペイン語が分からないので、英語で聞いてみると、どうやら私が乗る予定の夜行列車はキャンセルになった様子。

「次の列車がまた来るよ」、と言われ、次のを待ちました。
ほっとして次の列車に乗り込み、空いている席に座ろうとしたら、「ここは私の席です」と言われました。全席指定の列車だったのです。

席を立ち、窓際で、なぜか涙が出てしまいました。
座席のない私がこの列車に乗っていていいのか、車掌さんに言われて途中の駅で降ろされたらどうしよう、もし乗っていられても朝まで立ち続けるのは無理だ,等々思いが胸の中を駆け巡りました。

そこへ、一人のスペイン人のおじさんがやってきて、英語で事情を聞いてくれました。
おじさんは車掌さんに掛け合ってくれ、私は食堂車のいすに座れることになりました。今度はうれしくて、ありがたくて涙が出ました。

お陰様で、朝まで快適に過ごすことができました。食堂車がオープンするころ、再びおじさんが現れました。
なんと、私にコーヒーとクロワッサンを持ってきてくれたのです。
それらの美味しかったこと。

無事に目的地に着き、おじさんに言っても言い切れない程のお礼と、お別れを言い、また、涙が。
スペインの素晴らしい世界遺産や美術館、街並みを堪能し、旅は終わりました。

ですが、おじさん、おじさんの新切は私の心に温かい明りとなって、今なお、灯っています。
年月が経っても、決してこのあかりは消えません。
昨日も電車に乗っていて、おじさんの事を思い出しました。

おじさん、見ず知らずの泣きじゃくっていた日本人に、沢山の親切をどうもありがとう。

FavoriteLoadingお気に入りに入れる
ハートを送る を送る (16
Loading...
スポンサーリンク
>>新しい手紙一覧へ
>>新しい手紙一覧へ