「母」じゃなくて「妻」にしてくれて、ありがとう

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夫へ

次男が生まれた。家族にとっても嬉しかったはずの出来事。
なのに、二歳の長男がわがままを言ったり、次男に乱暴しようとしたりする。
「次男くんが、かわいそうでしょ!」
「もう、あっちいって!」
うわーん! と泣く長男。次男もつられて泣く。あー、もう。泣きたいのは私の方なんですけど……。

久しぶりの新生児に常にバタバタしている。昼も夜も、お世話と家事に明け暮れて気づけば一日が終わっている。今までみたいに、長男にばっかり構っていられない。

ある日、ついに手がでてしまった。
「次男くんの足、ぎゅっと掴まないでって言ったでしょ!」
言うのと同時に長男を強く叩いてしまった。しかも頭を。
ハッと気づいたら、長男が張り飛ばされていた。
うわーん! と大泣きする長男。
私の中で感情がぐるぐる回っている。「だって、何度も言うことを聞かなかったから」「これはしつけ」「長男が悪い」「でも……」
後味の悪さからわかってた。長男はたしかにワガママだったけど、叩き倒されるほど悪くなかった。

泣きぐずる長男をなだめすかし、苦い気持ちのまま家に戻る。寝かしつけまでなんとか終えて、帰ってきた夫に「こんなことがあって……」と話す。
夫は心配そうにこう言ってくれた。

「かわいそうだったね、ひろ子が。でも、そういうふうに衝動的に動いて、もし長男くんが怪我したら、後悔するのはひろ子だと思うから……」

ハッとした。たしかにそうだと思った。
自分のなかでドロドロとしていた気持ちが、するりと溶けてゆくのを感じた。

今では次男も大きくなったし、私もあまりストレスをためないようにしているので、長男に手をあげることはなくなった。
でもあのとき、夫が「お母さんとしてそれは失格だと思う」なんて言ってたら、きっと今でも気持ちの整理をつけられずに、叩いてしまっているかもしれない。

あのとき、私を「お母さんとして」ではなく「妻として」心配してくれた夫。終わりの見えないドロドロとした嫌な気持ちの沼からすくい上げてくれた魔法のことば。あのときからずっと大事にしている。
夫、ありがとう。

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