素直になれずにずっと言えなかった有難う

体の弱いお母さんへ

若くして嫁ぎ、意地悪な姑や小姑と一緒に暮らし、とても苦労たお母さん。お父さんが理解がある人だと良かったのですが、酒浸りの毎日で帰ってきては、お母さんを蹴って起こしては、説教をする日々で、どれだけ辛かったでしょう。

私が中学生のある日、お母さんは遂に家を出て、行方不明になってしまいました。思春期の私にとっては、私を置いて出て行ったお母さんのことを理解することができませんでした。

その頃から私は、ニュースで身元不明の殺人事件が報道される度に、お母さんではないかとドキドキしながら見ていたのを今でも覚えています。学校から帰ってからは、もしかしたらお母さんから電話があるかもしれない。という思いから、家の電話のそばから離れられませんでした。

高校の卒業式の日でした。お父さんは、もともとそういう行事に参加する人ではありませんでしたので、身内が来ていると思っていなかった私にあるサプライズが待っていました。

高校の門をくぐると、人ごみの片隅になんとお母さんが花束を持って立っていたのです。私は、泣きました。その涙はお母さんが無事だったという思いであふれていました。ですが、その時、お母さんに「ありがとう。」という事が出来ませんでした。

この場を借りてお母さんに沢山のありがとうを伝えたいと思います。
無事でいてくれて、卒業式に来てくれて、私を産んでくれて、過酷な環境の中私を育てるために沢山の我慢をしてくれて「ありがとう。」を伝えたいです。

お気に入りに入れる