生前には言えなかった「ありがとう」

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お母さんへ

お母さんありがとう。
もう10年も前に亡くなったお母さんに、生前には言えなかった「ありがとう」を伝えたいと思います。

小さい頃から末っ子の私を人一倍かわいがってくれて、共働きで保育園に預けられていた私のために、冬は家の石炭ストーブに火を絶やさすに、茶箪笥にはお菓子を欠かさず置いていってくれた、暖かくやさしいお母さんでした。

そんなお母さんが亡くなるまで何年も咳と嚥下で苦労していました。食事が喉を通らずやせ細っていきました。
父は毎晩咳をする母の肩を何十分も叩いていました。

私はそんな両親を見ていることしかできませんでした。「私が肩を叩いてあげようか?」と言っても「いいよ。お父さんが叩いてくれるから」と言ってやらせてくれませんでした。とてもつらそうでした。

その上、私の夕飯のことばかり気にして、弱った体で夕飯の支度をしていてくれました。冷蔵庫の中は私の好きなおかずでいっぱいでした。そんなときも「お母さん、ありがとう」とは言えませんでした。

私は母の実の子供ではないのです。小さいころ私の両親にしてくれと言って来たふたり。
私には断ることが出来ず、その後そんなことは忘れてしまったのです。実の親だと思って思い切り甘えていました。

亡くなる前には何ヶ月も入院していたのですが、意識は無く「ありがとう」の言葉は私の頭の中にはありませんでした。
やっと今になって「ありがとう」の言葉にたどり着いた感じです。生きている間に、意識のある間に言えていれば良かったと思います。

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