いつも無口なお兄ちゃん、ありがとう

私の兄はとても無口です。
私が小学生の時はむしろおしゃべりで優しく、いつも仲良く話していました。
しかし中学生に上がってからはいきなり家族と話さなくなり、大人になっても必要な会話以外はしない状態でした。

私が社会人一年目の時の事です。
当時付き合っている彼との間に子供が出来ました。
彼も同い年でまだ若く仕事が安定していない事もあり、結婚、出産を彼の両親も含め猛反対されました。

妊娠を伝えると、泣きながら母は私に近付いて来ました。
「あんたまで私を裏切るような事をするの！？」
など、色々な事を叫ばれ、叩かれ、私は逃げるように家を出て行きました。

古い考えの人なので話すと大変だと思い、私は母に恋人がいる事すらまだ話していませんでした。
それが子供が出来たと伝えたら・・覚悟はしていました。
しかし、その怒りと悲しみは想像以上で、つわりも始まっていた私はかなり精神的に追い詰められました。
申し訳なさから、もう自分がいなくなった方がいいのかな・・など、危ない考えになっていきました。

そんな時、兄から電話がありました。
もちろん無口な兄とは電話をする事すらありませんでした。
すると、
「お母さんの事は俺がなんとかするから、大丈夫だから、体を大事にしていな」
それだけ言って、兄は電話を切りました。
何十年も兄の事がよく分からなくなっていました。
でも、
「やっぱりお兄ちゃんは昔と変わらず優しいんだ」
と思い、涙が出ました。

その後、一時は家族と絶縁状態になりましたが、時間をかけて和解をし、無事に結婚、出産をする事が出来ました。

現在、子供は小学生になりました。
子供は叔父である兄を一番慕っています。
兄もとても子供を可愛がってくれます。

あの時、兄の言葉がなかったら・・。
兄のおかげで今の幸せがあるんだなと思います。
なかなか言い出せなくてまだちゃんと伝えられていないけど、
お兄ちゃん、本当にありがとう。

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