『ごめんね』ではなく『ありがとう』を

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旦那様へ

十代のうちに結婚したい!
その私の願いを叶えてくれたのが、主人です。
早くに結婚して、色々ありながらも楽しく暮らしていたある日。
何日か前から少し体調が悪かった私はその日もパートに出る予定だったのですが、やはり気分が悪く職場に休ませてほしいと連絡をいれました。
返事は、申し訳ないけど代われる人がいないとの事。
仕方なく家を出て数十メートル歩いたあたりで強烈な吐き気と脂汗でへたりこんでしまったんです。
人目につかないようにとっさに陰にかくれたんですが、どうにも良くならない状況に怖くなり、近くを通りかかったご夫婦に救急車を呼んでもらいました。
優しくしてもらった奥様に何度もお礼を伝えて、救急車の中で隊員の方に仕事場に電話をしてもらい、ひとまず病院へ向かいました。
処置をしてもらい落ち着いた私に、主治医の先生が『入院です』と一言。
貧血がかなりひどい状態だったようで、点滴が必要とのこと。
仕事終わりの主人が来てくれて、説明。
『点滴してもらって、明日には帰る!』くらいにその日は休みました。
翌日、点滴後にまた先生から『帰れません。今日遅くなって構わないのでご家族を呼んでください。』と。
その日の夜先生から、私の体に癌が見つかったと告げられました。
婦人科系の癌だと。
あまりにアッサリ告げられたので、その時は私もそこまで落ち込みはしませんでした。
あんなドラマみたいな雰囲気は一切ありません。
その後一週間入院した後、薬を飲みながら通院。
三ヶ月毎に検査。
薬が効いて良くなったり、薬を止めると元に戻ったりして気が付くと五年が経っていました。
先生との問診の際に『まだ子供がいないご夫婦という事でなんとか薬でやってきましたが、五年経ったので手術を考えましょう。』と、言われました。
手術に対しての恐怖はなかったのですが、これで『女』ではなくなるという恐怖が一瞬で私を襲いました。
とはいえ、かなり男っぽい性格の私は即決で手術を決め、パート先にも休みを伝え準備をしました。
入院、手術、退院。
計一週間で病院を出され、手術前とあまり変わらない生活が退院した日から戻りました。
体調も良く、親も安心して、この手術は間違いじゃなかったと『思い込む』のではなく、まわりがそう思わせてくれました。
それからさらに五年が経ち、問題なく術後の通院もかなり緩くなり、そんな事もあったなくらいに今は笑って話します。
ただ、五年経った今もふとした時に『女じゃない』事が頭をよぎったり、友達の妊娠報告や出産報告を羨ましく思います。
でも、その感情も日に日に薄くなるし、素直におめでたいと思えるようになりつつあります。
でもひとつどうしても手術前と変わらない気持ちが私の中に残っていて、それはたぶん一生私の中からは消えないと思うのが、
『あなたを父親にしてあげられなくて
ごめんなさい。』
と、いうこと。
主人は一言もそんな事は口にはしません。
私が勝手にネガティブに考えているだけです。
むしろ主人は『その分二人で遊びまくれる!』と、笑っています。
私はその度に何度も救われます。
ありがたいなと思います。
手術が終わった日の夜、病室を出たあなたから『顔見て安心した。これからもよろしく!』とメールくれましたね。
そんなあなたを今度は私が元気づけて笑わせて幸せにしないといけませんね。
だから、、、ごめんじゃなくて

『ありがとう!これからもよろしく!』

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