話を聞いてくれてありがとう。

まあちゃんへ

結婚して20年、良いときも悪いときもありました。
大嫌いってケンカした日も、子供は結局無理だったと泣いた日もあったけど、私はずっとまあちゃんが大好きでした。
でも、家も買っばかりなのに単身赴任するって言い出したとき、まあちゃんはあの女の人と行くのかなと私は思ってしまいました。だって、会社の部下だって言う女性から最近よく電話が来てたし、ラインでやり取りしてるのも見てしまったから。
だから私は思わず離婚すると言って、結婚指輪を投げ捨ててしまいました。
冷静になって考えたらすぐ分かることなのに、ここのところ忙しくしていて、話もきいてくれないまあちゃんは、もう私なんかいらないのだと思ってました。

まあちゃん、指輪を投げたのを見て、すぐに外に飛び出したよね。
まあちゃん、夜も遅いのにスマホの明かりを頼りに隣との僅かな隙間を探してくれたよね。
まあちゃん、ちょっと太ってるのに、無理やり隙間に入り込んで、探してくれたよね。
まあちゃんが「指輪、あったよ」って、壁に擦れて汚れた顔でにっこり笑ってから、「ごめん、なにも話さないで決めた俺が悪かったから、もう一度だけ指輪をつけさせてください」って、思わず土下座しようとして、でも壁があって動けなくて「ごめん」と言ってくれたよね。

でも、私もずっとまあちゃんのこと怒って無視してたから、そもそもまあちゃんが話しかけづらかったのも事実です。ごめんなさい。
私達、二人共、言わないといけないことを言わない夫婦でした。ごめんなさい。
だから、私のどうしようもない嫉妬話を聞いてくれてありがとう。
まあちゃんも、どうして単身赴任を決めたか話してくれてありがとう。
ローンが大変だからって言うけど、それなら家を建てる前に相談してほしかったです。
部下の女性の人は既婚者だって言う話も言ってほしかったです。
でも、おかしいと思ったことを聞かなかった私もだめでした。

まあちゃん、私の話をきいてくれてありがとう。そして、私もちゃんとまあちゃんと話すようにします。

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