- 14 ペットへのありがとう
- 2018.05.06
お疲れ様です
実家の父から「昨日、犬が死んだよ」と連絡が入ったのは五月の頭でした。
当時の私は結婚して家を出て2年が経っていて、父の連絡のメールを読みながら、「そうか、じゃあ最後にあの子の顔を見てから二年も過ぎたのか」とぼんやり思っていたのを覚えています。
犬は、生後三か月くらいのところを拾われた子で、私は小学生でした。
公園で遊んでいた友達が、一匹で物悲しそうに鳴き声を上げていた子犬を見つけ、一番近くの私の家に連れてきてくれたのが始まりです。
犬をいつか飼いたいね、と家族で話はしていたものの、具体的な予定は一切立っていなかった時に突然やってきた子犬は、本当にタイミングよく我が家の家族になりました。
金茶の毛色で面長の雑種の女の子です。不思議と手足、しっぽの先だけ毛が白く、きつねみたいな子だね、と家族で笑いました。
真面目な性格で、父はもちろん家族のしつけをしっかり守るよい子でした。
静かな子で、無駄に吠えることもないので、鳴き声を覚えていないくらいです。
少しだけ臆病で、散歩の途中で自分よりうんと小さな犬に吠えられただけでしっぽを腹に丸め込むような子でした。
温和な子で、前足を掴んで握手をしても嫌な顔一つせずに鼻をひくひくとさせて顔を舐めてきました。
優しい子で、私がひょんなことから拾ってきた、目の開かない仔猫の排泄の世話を一生懸命してくれました。
晩年の彼女は老いて散歩もろくに行けない有様で、ただ人から与えられる鶏肉を飲み込んで、一日のほとんどを寝て過ごしていたと聞きました。
息をするのも大変そうな様子だったと父から聞いて、そうか、楽になったのならよかった、と思いました。
私の小学生から大人に至るまでのアルバムには、必ずどこかに彼女の姿がありました。
人生の半分くらいを一緒に過ごした、大切な家族でした。写真を見て過去を思い出す時、必ず彼女のことも一緒に思い出しました。楽しいものばかりではないけれど、私が接した彼女はいつも優しかったことを覚えているし、アルバムの中の彼女の目はどれも優し気でした。
息をするのも大変だったでしょう、お疲れ様でした。
私の家族になってくれて本当にありがとう。