冬になると思い出す父の背中

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お父さんへ

私は家族に対してあまり素直にありがとうと言ってきませんでした。
それでも、「やっぱり家族ってあったかいなぁ」
「この父と母の娘でよかった」と思う出来事はたくさんあります。
今回はその中でも冬になると思い出す、あるエピソードを一つ。

それは、今から8年前の中学3年生の時。志望校の受験日でした。
志望していたのは自分の偏差値より少し高い学校で、
受かるか受からないかの瀬戸際。
受験日前の私は気が気じゃない状態でした。

そして受験日当日、そんな不安に追い打ちをかけるとある事件が。
朝から大雪で志望の高校までの電車が動かなくなっていたのです。
とりあえず朝ごはんを食べて身支度を始め、母とリビングで
耳をうさぎにして運行再開の放送を待ち構えていました。

そんな時、リビングの近くにある勝手口から
「ガチャガチャ」とドアを開けようとする音がしました。

入ってきたのは服を真っ白にして帰ってきた父でした。
聞けば、駅まで車は出せないけど、
運行再開したら私がスムーズに駅まで向かえるように
雪かきをしてくれていたそう。

そして、父の帰りに続くように「電車の運行が再開します」の放送が流れました。

私たち3人はホッと一安心。

そして「一応雪かきはしたけど、家の前の道はちょっと歩きにくいから」
と、父が大きめの道路まで見送ってくれることに。

母に「受験頑張ってや!」と見送られ、私は家を去りました。

まだ辺りは暗く、冷たく深々とした空気の中を
「モギュッモギュッ」と音を鳴らしながら歩く父と私。

父の大きな足跡ができたところに、私は後ろで
静かに足を合わせて歩いていました。

その間、父との会話は何もありませんでしたが
ふと顔を上げるとその大きな背中が
「頑張ってこいよ」と強く言ってくれている気がしました。

その時の父の背中の大きさと
言葉のない応援に私は目から涙が一粒溢れました。
父に気づかれないようにすぐぬぐい取った、
そんなあの日の朝が今でも忘れられません。

その後、無事に受験会場につき受験結果はなんと「合格」。
私は高校を卒業後、大学に進学し、現在は東京で元気に働いています。

お父さん、言葉は少ないけど
いつも静かに見守ってくれてありがとう。
まだまだ未熟だけど、ここまで育ててくれて本当に感謝しています。
これからも、不安になった時はあの日の背中を思い出して
前を向いて進んでいこうと思うので、これから成長する姿も見ていてね。

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