あなたでよかった

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おじいちゃんへ

両親の代わりに、私を幼い頃から育ててくれてありがとう。

男手ひとつ、それも実の孫を育てることは容易いことではなかったと思います。
それでもあなたは必死に働き、私を小中高大と不自由なく通わせてくれました。

しかしそんなあなたに、まだ小学生だった私は友人からおじいちゃんと暮らしていることをからかわれたくなくて、一緒に出掛けることを避けたり、参観日の手紙を渡さずに捨てたりと自分の気持ちばかり優先していました。

あなたに「そんなに自分のような老人が隣にいるのは恥ずかしい事か」と言われた時、そうだとも、そうではないとも言えずバツの悪い顔をしたまま黙ってしまいました。

そんな私の態度に腹が立ったり、悲しくなったり、虚しくなったり、きっと長い間あなたは何度も傷付いたんだろうなと思います。

それでも私の幸せを願い自分の人生をかけて育ててくれたこと、私が家族を持ち、遠くで暮らしている今でもずっと気にかけてくれていること、私はずっと感謝しています。

あなたは認知症になり、どんどん記憶が薄れていく中で、それでも急に電話をかけてきて、「今夢を見ていたんだよ。まだおまえが小さい頃の夢で、あぁ、本当に現実のような夢でね、目が覚めてとても寂しくなってしまって、ついかけてしまったよ」というあなたがとても弱々しく見えて、私はひどく悲しくなりました。

私はあなたに育てられてよかったと、ありがとうと、今のあなたの記憶からすぐに消えてしまうとしても、ちゃんと今の気持ちを伝えていきたいです。

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