その時の嬉しさは心の灯でした

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名も知らないすれ違っただけのあなたへ

息子達が、まだ幼い時でした。次男はある病気に罹り、外見が酷い状態になり、毎日のように病院へ通っていました。医師や看護師の方々は親切にして下さいましたが、待合室ではいつも奇異な目で見られたり、露骨に避けられたりしていました。救いはまだ次男が幼くて、そのことを理解していないことでした。

毎日泣きながら暮していました。少し病状の改善が見られた時、思い切って長男と次男を連れて、ショッピングセンターへ買物に行きました。すれ違う人々が次男を見ているようで、私は気が休まりませんでした。

おもちゃ屋さんの前に来た時のことです。ちょうど女子高校生数人が、通り過ぎました。その直後、声が聞こえました。「ねぇ見た?今の子たち?」「見た見た」「私も見たよ。男の子二人だよね」その言葉は、私の胸に突き刺さりました。

次の言葉を聞く勇気がない。でも言葉は容赦なく私の耳に届きます。私は心に鎧を纏いました。そして声が。「可愛いよね」「うん、可愛い」「そうそう、小さい子、可愛かった」「弟君、皮恣意よね」ビックリして顔を上げました。女子高校生たちは、息子達に手を振ってくれていました。

息子達は気が付きませんでしたが、私は頭を下げました。そして涙が出て来ました。可愛いなんて初めて言われた。そう思うと涙が止まりませんでした。あの時の気持ちは、感謝しかありません。

その後も次男は治療を続けましたが、私の心は変化しました。「可愛いと言ってくれた人がいる」そう思うと、前を向こうという気持ちになれました。あの時、次男を可愛いと言ってくれたあなた、本当にありがとう。あなたの言葉は、私の心を温かくしてくれる灯でした。

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