いつか会えたら

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あれは、私が28歳の夏だったと思います。
その人は、私の直属の上司の古い友人で、少し怖い人でした。

ある日、私はその人とペアを組んで仕事に出かけることになりました。その人は訪問先で1人で喋り、私はただ、横に座ってにこにこしているだけでした。

お昼の時間になり、その人は「ラーメンが食べたい」「これが美味しいの!」と勝手にメニューを決めて注文してしまいました。
向かい合って座ると、会話に困ります。何を話そうかと思いを巡らせてくると

「いつかあなたに話そうと思っていたんだけどね。」

と、その人は真剣な面持ちで話し始めました。
このフレーズから始まって、何時間も説教をされたと同僚から聞いたことを思い出しました。とうとう、私も餌食になるのか、と思いきや。

「離婚したんだってね。大変だったね。まあ、他人はいろいろ言うかもしれないけど、気にすることはないよ。」

「私もちょうどあなたと同じ年齢の頃に離婚して、原因不明の強烈な痛みを伴う病気になってね、痛みをこらえたり、憎しみの気持ちを捨てられなかったりしてね。見てごらん、眉間にこんなに深いシワが出来ちゃった。」

その人は笑って首をすくめた。笑顔の真ん中に、深い縦皺が刻まれていました。

「他人のせいでも、水に流してあげなさい。眉間に皺を刻まないように努力しなさい。意地悪されたことは忘れて、良くしてもらったことだけ、覚えておきなさい。嫌なことは忘れたもん勝ち!負けるなよ!」

その人はその後、再婚したご主人の会社が倒産して行方知れずになってしまいました。
あの時に励ましてもらった言葉は、今でも大切にしています。
眉間に皺を寄せない心持ちを教えてくださって、ありがとう。おかげで眉間は綺麗なままで、50歳の誕生日を迎えられました。
お元気ですか?いつか、あの日のお礼をお伝えしたいと願っています。

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