顔も知らぬ祖父へ

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祖父へ

母が高校生の時に亡くなった、私の祖父へ。
お会いしたことはありませんが、あなたの事は村どころかそこらじゅうの集落で知らない人はいないといって過言ではないくらいのモテ男だったと母の叔母から聞いて育ちました。
祖母は、「男前で賢くて思いやりがあって素敵で誠実で働き者で、もうこの人と結婚しろって言われたら誰だって【ハイ】しかないわよ。文武両道を絵にかいたような人で、芸術方面も完璧だった」といまだに頬を染めてつぶやいています。
「おばあちゃん、自分の婿さんが誰か知らなかったの?」
と聞けば
「知ってたら、当日まで浮かない顔なんてしてるわけないじゃないの! その頃は夜に式を挙げて、翌朝自分の隣で眠っている人がお婿さんていうのが常識だったの。顔どころかどんな人かも知らないで嫁ぐのが田舎の普通よ。人と人じゃなくて、家と家の結婚だったんだから。朝起きて、腰が抜けたわよ! あの超格好いいあの方が! そこらじゅうの集落の憧れの方が! 私のお婿さんだなんておとぎ話よ!」と結婚は宝くじと強調していましたね。

顔も知らぬ祖父のおかげで、私は結婚を富くじだとおもって育ちました。
シンデレラは、コツコツと地道にやっていれば王子様が迎えに来るもんだと思いこんで育ちました。
なので、恋活、婚活を一切しないで気が付けば恋人は作ったことが無く結婚するのも意識せず。そんな身持ちの硬い時代遅れな人間になってしまいました。

結果、おじい様ありがとう!

とんでもない、大当たりの素敵な旦那様を手にしました。
年下で、素直で、頭が良くて、思いやりがあって、誠実で。
富くじだったら億万長者の大当たりです。
王子様が、馬に乗らずにひょこりひょこりと歩いて目の前に現れました!

祖父のような人を探し続けて、じっと息をひそめて30年。
本当に、ありがとうございます。
焦らずに世間に流されずに過ごしてよかったです。
心から感謝します。

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