息子よ、生まれてきてくれてありがとう!

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息子へ

結婚生活も三年目に入ったころ、妻がぼそっと「なるべく若いうちに子育てをしたいな、体力的な問題もあるし」と言いました。結婚してから子供のことについて何も話し合ってきませんでしたから、突然の言葉に「うん、まあそうだね」としか返事できませんでした。表面では平静を装ってはいましたが、内心、ちょっとドキドとキして、その日の夜は目がさえてなかなか寝付けませんでした。

今になって思えば、妻は考えに考えた結果、勇気を振り絞って私にせがんだのだと思います。結婚してもお互いに仕事がありましたし、休日がずれていたこともあって互いの自由な時間が豊富にありました。私は週末の度に、趣味である釣りや麻雀に没頭していました。私たちの関係は「夫婦」というよりも「同居者」のようでした。

ですので、妻が「子供が欲しい」と言い出した時は、「自分の自由が奪われる!」と警戒したのです。なさけない男でした。

それからしばらくして妻が妊娠、翌年の5月に息子が生まれました。新生児室に並んだ赤ちゃんたちの中で、うちの息子だけなぜか肌が白くて驚きました。他の子たちはお猿さんみたいに赤い顔をしているのに。それと、息子の頭部が縦に長細く見えました。「大丈夫かな、頭?手や脚はちゃんとついているか?」とガラスにへばりついて確認しました。

難産だったためベッドで憔悴しきっている妻を見て、なぜか涙があふれました。そして「大変だったね」と結婚してから初めて妻にねぎらいの言葉をかけました。それからは、妻の病室と新生児室を何度も何度も往復して二人の様子を伺いました。

自分の子供が生まれたという事実を「奇跡」と感じ、私の遺伝子が形になっていることをとても神秘的に感じました。すると、日に日に息子と妻に対する愛情が深くなっていきました。息子が生まれるまでは、まるで独身のように好き勝手しながら結婚生活を送ってきましたが、息子が生まれると自分の欲望などどうでも良くなりました。

自分の洋服なんてなんでもいい、着られれば。俺が飲みたいジュースを買うと息子が飲めないな。寒いから妻にタイ焼き買って帰ろう。今までにはなかった「自分より家族」という感覚が、息子の誕生とともにはじめて生まれたのです。

息子よ、私のもとに舞い降りてくれてありがとう!父さんは変わったよ!どんどん家族への愛情が深くなっているよ!お前が生まれていなければ、父さんは今でもダメ人間だったに違いないよ。「人を愛することの大切さ、愛し合うことの温かさ」いろんなことをお前から学んだよ。毎日、お前に教えられることばかりで、父さんもまだまだ一人前の父親じゃないけど、これでもできる限り頑張っているんだよ。

息子よ、そして妻よ、私の人生に「愛」を与えてくれてありがとう!

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