こんな娘だけど、心からのありがとう

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私は四人兄弟の三番目で一人娘です。男兄弟の中での女一人なのでとても厳しく育てられたし、同時に可愛がられたと思います。

しかし私は特に厳しかった母親に反発ばかりでした。

門限を守らないのは日常茶飯事でしたし、当時の恋人はお世辞にも誠実に見えるようなタイプではなかったので、母親にとって心配と悩みの種だったと思います。

高校生の時には家出をしたこともありました。

高校を卒業し就職してからは学生のころに比べて厳しさは軽減してはいましたが、一人娘ということもあってか、他の兄弟よりは制限されることも多かったと思います。

二十歳で実家を離れ契約の派遣社員として上京した時のことです。

私が高校時代に父親が他界している為、実家を離れても母親に仕送りをする約束だったのですが、母親の厳しい目から離れ遊びたい盛りだった私は数か月で仕送りを止めてしまいました。怒られ嫌味を言われるのが怖く、母親からの電話にも出ることはしませんでした。
そんな状況になってから一年程経った頃です。

情緒不安定が続き仕事も休みがちになっていた私は、とうとう契約更新を打ち切られることになり、住んでいたアパートも会社の寮だった為、退去しなくてはならなくなったのです。貯金などもちろんなく、新しく仕事を探すにも住む場所がないので、どうしたものかと途方に暮れていました。

そんな時、こんなにタイミングよく連絡がくるものかというタイミングで母親から電話が掛かってきたのです。仕送りも絶ち、音信不通が一年程も続いていたので怒鳴られるのを覚悟で電話に出ました。

母親の電話での第一声は予想を遥かに越えるほど穏やかで優しかったのを覚えています。母親の優しい声に安心し、私はそれまでのことやこれからどうして行こうか悩んでいるのを打ち明けました。

実家に帰っておいで、お前が帰ってきてくれた方がお母さんも安心だから。そう言ってもらえるとは思っておらず、私は自分の未熟さを反省するとともに、実家に帰ることを決めたのです。

昔から厳しく、あまり褒められたりすることもなかった為、反発しまくり音信不通になる娘のことなど・・・となると思っていたのですが、やっぱり私の母親なのだなと改めて感じました。

実家に戻ってからは以前ほど口うるさく言われることもなくなっていたのですが、母親は働いていなかったので、兄弟で生活費を家に入れるという形でした。

正社員の仕事を見つけ働いていましたが、資格を持っていない私に稼げる給料は多くはなく、半分以上の額を家に入れる約束になっていたので、また段々と実家を出たいという気持ちが出てきていました。

しかし、生活費で入れるお金を差っ引くと手元には貯金できるものは残りませんでしたので、三十路手前にしてまた寮のある仕事をすることに決めたのです。

若かった頃に比べると母親と話し合いをしてお互いが納得し、昔話をするくらい対等にはなってきていたので、また実家をでることも反対されることはなかったです。

家を出る前日、友達と出かける前の私を引き留め、ちょっと飲みながら語ろうと母親に誘われ、その日産まれて初めて母親とお酒を酌み交わしました。昔話にも花が咲き、やっと私のことを認めてくれたのかなと感じました。

新しい仕事は収入も安定していたので、やはり働いていない母親に仕送りをする約束は変わっておらず、始めの数か月は送っていました。

若いころと違い、今度は遊びたいが為ではなく、貯蓄にまわしたいという欲に変わり、またもや私は仕送りを止めてしまいました。二度目であるからなのか、母親との溝が昔より深まってしまったのです。

私なりにも思うことがあり、簡単には自分の考えを曲げられず、未だ疎遠になったままです。

私は昨年の夏に結婚しました。

母親とは連絡を取っておらず、そうは言っても夫の家族にこのままでは顔向け出来ないので、私は母親に手紙を書きました。入籍する前と、した後と二度書いたのですが、返事は来ませんでした。

数か月過ぎた頃に母親からの留守電がありました。留守電の内容は喜ばしいものではなく、結婚は反対であること、もう親でも娘でもないから勝手にやってくれということが入っていました。

私は母親が苦手であり、この世で一番怖い存在であり、しかしそれと共に一番感謝している存在も母親です。

産んでくれたこと、父親が亡くなってからも高校卒業させてもらい育ててくれたこと、良くも悪くも厳しくしてくれたこと、私が未熟で頑固であるがために疎遠になってしまってはいますが、母親がしてくれたこと言ってくれたこと全てがあっての今の私があると思っています。

こんな娘だけど、お母さんの娘で良かったと心から思っています。わがままで素直じゃない私だけど、今はまだ直接は伝えられないけど、本当にありがとう。

いつかまた笑って話せる日が来るまで、頑張ります。ありがとう。ありがとう。

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