電車の車内での出来事

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電車で出会った見知らぬご婦人へ

ずいぶん前のことです。
私はJRの新快速に乗っていました。
在来線だけど、主要駅しか止まらない電車です。
私は始発駅から乗ったので、4人掛けの席の窓際に座れましたが、
日曜日でいつのまにか満員の乗客になりました。
私は窓の景色を見ながら、本を読んでいました。

ふと気が付くと、身動きとれないほど満員のはずが、
なぜか通路がざわざわとして、隣の席の人が停車したわけでもないのに
さっと席を立って行きました。
あれ?と思っていると、いかにも労働者風の男性が座り、
私に、どんな本を読んでるんだとか、しつこく絡んできたのです。
私は怖くて無視していましたが、窓際で逃げようにも逃げられず
停車駅はまだまだ遠く、本当に怖い思いでいっぱいでした。
この男性のせいで、さっきから通路の人が動き、
隣の席の人が逃げ出したのだとわかりました。

車掌さんとか来ないんだろうかと、泣くような気持でいたとき、
向かいの席に座っていたご年配の女性が、
この絡む男性にやんわりとした感じで話しかけてくださったのです。
男性は、女性を話し相手に、ダイヤは1カラット以上ないととか
熱弁をふるい出して、私のことなど忘れたかのようでした。
女性は何気ない雰囲気で、にこやかに穏やかに相槌を打っておられました。

私は知らぬ顔して読書に集中しているようなふりをしていましたが、
なんというか九死に一生を得たような気がしていました。
次の駅に着いたとき、女性が降りる様子だったので、
終点まで乗る私は、降りるふりして別の車両へ乗り換えました。
私の後ろ姿に、男性は、降りるのか姉ちゃんと声をかけてきました。
ぞっとしました。

あのとき、あの女性がいなければ、私は無事で済むはずがなかった、
暴言とか暴行とかに発展していたかもしれないと思います。
本当にありがとうございましたと声をかけなければいけなかったけど
逃げるのに必死で、それができなかったのが残念です。
あの絡まれた怖さと、女性が話しかけたシーンを思い出すたびに
ありがとうございましたと感謝の念を送っています。

車中の人がバタバタと逃げるような人にさりげなく話しかけて
落ち着かせるって、本当に勇気のあることだと思います。
私もああいう女性になれればいいなとも思っています。

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